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【コラム】ビタミンC(アスコルビン酸)の歴史と分析

【コラム】ビタミンC(アスコルビン酸)の歴史と分析

2023/04/03

記事

「オレンジジュースを飲みなさい。ビタミンCが含まれているから体に良いのよ!」

ほとんどの人は子どもの頃に、このようなことを言われた経験があるでしょう。ビタミンCは、アスコルビン酸またはL-アスコルビン酸としても知られており、人間が自ら合成することのできない必須栄養素です。そのため、新鮮な果物や野菜などの外部供給源から摂取する必要があります。ビタミンCには抗酸化作用があるため、食品保存料としてもよく使用されています。このブログ記事では、ビタミンCの歴史と、さまざまな製品中のビタミンCを測定するために使用されるいくつかの分析手法について説明します。

ビタミンCの歴史

British naval physician James Lind (1716–1794)
イギリス海軍の医師 James Lind(1716–1794)

ビタミンCの歴史は、かつて船員の主要な死因であった恐ろしい病気、壊血病と深く結び付いています。Vasco da Gamaはすでに柑橘類の治療効果に気付いており、当局は壊血病を予防するためにレモンジュースやその他の植物性食品の使用を推奨していました。

しかし、1747年に、柑橘類が壊血病を予防できることを対照実験で確認したのはイギリス海軍の医師James Lindでした。この実験でLindは、壊血病の重症度が同程度の12人の船員を2人ずつの組に分け、それぞれ異なる治療を行いました。2週間にわたり、研究参加者にはリンゴ酒、エリキシル・オブ・ビトリオール(硫酸とアルコールの混合物)、酢、海水、ニンニク、マスタードシードおよびその他の香辛料から作られたペーストと大麦水、あるいはオレンジ2個とレモン1個が与えられました。オレンジとレモンを与えられた組だけが治癒しました[1]。その結果、イギリス海軍はすべての艦船にヨーロッパ産レモンから作られたジュースを常備するよう命じました。Lindは、この柑橘類の薬効がその高いビタミンC含有量によるものであることを知りませんでした。

その後の数世紀にわたり、壊血病を予防することが知られていた食品は、壊血病を意味する中世ラテン語「scorbutus」に由来する「antiscorbutic」と呼ばれていました。これらの食品には柑橘類のほか、例えばJames Cookがハワイへの長航海で使用したザワークラウトも含まれていました。

Hungarian scientist Albert Szent-Györgyi (1893–1986)
ハンガリーの科学者 Albert Szent-Györgyi(1893–1986)

1912年、Casimir Funkはビタミンを必須の食事成分として捉える概念を提唱しました。いわゆる抗壊血病因子は、まもなく「水溶性C」と考えられるようになりました。ビタミンCは1928年に、ハンガリーの科学者Albert Szent-Györgyiによって動物の副腎から初めて単離されました。彼はこの物質をヘキスロン酸と名付け、壊血病を予防する抗壊血病因子であると推測しました。

1932年になって、Szent-GyörgyiとJoseph Svirbelyは、ヘキスロン酸が実際にビタミンCであると結論付けました。同じことは、そのわずか数週間前に米国のCharles G. Kingによっても確認されていました。これはおそらく、Svirbelyが発見を知らせる手紙をかつての指導教官であったKingに送ったためでした。その後数年間にわたり、発見の優先権をめぐる激しい論争が続きました[2]。

Walter N. Haworthは1933年にビタミンCの化学構造を解明しました。彼とSzent-Györgyiは、その抗壊血病作用にちなみ、L-ヘキスロン酸をアスコルビン酸(ラテン語で「a」は「~なし」、「scorbutus」は壊血病を意味する)と命名することを提案しました。この発見などが評価され、Albert Szent-GyörgyiとWalter Norman Haworthは、それぞれ1937年のノーベル生理学・医学賞およびノーベル化学賞を受賞しました。

現在におけるビタミンCの利用

今日では、必要なビタミンCの摂取量は通常、私たちが消費する新鮮な果物や野菜によって満たされています。さらに、ビタミンCは栄養補助食品や、処方箋なしで購入できる一般用医薬品(OTC)としても入手可能です。また、その抗酸化作用によって食品の劣化を防ぐため、パン、ジャム、ワイン、さらには食肉製品などの食品保存料としても使用されています。ビタミンCは、酸そのもののほか、さまざまなアスコルビン酸塩およびエステルに対して、E300~E305のE番号が割り当てられています。

アスコルビン酸塩は化粧品やパーソナルケア製品にも使用されており、これらの塩は抗酸化剤として作用し、製品の劣化を遅らせます。アスコルビン酸は、写真製版、水処理、プラスチック製造、および蛍光顕微鏡法にも使用されています[3]。

医薬品の品質を保証し、食品表示法に準拠するためには、食品および医薬品中のビタミンC含有量を測定する必要があります。次のセクションでは、さまざまなマトリックス中のビタミンCを測定するいくつかの方法を紹介します。

滴定法によるビタミンC分析

ビタミンCは、多くの場合、2,6-ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)またはヨウ素を滴定剤として用いる滴定法によって分析されます。これらの滴定剤はいずれもアスコルビン酸と酸化還元反応を起こします。アスコルビン酸(C₆H₈O₆)はデヒドロアスコルビン酸(C₆H₆O₆)へ酸化され、一方でDCPIPまたはヨウ素は、それぞれDCPIPH₂またはヨウ化物へ還元されます。図1に、DCPIPによるアスコルビン酸の滴定反応式を示します。

The reaction of ascorbic acid and 2,6-dichlorophenolindophenol (DCPIP) resulting in dehydroascorbic acid and the reduced form of DCPIP.
図 1. アスコルビン酸と2,6-ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)の反応により、デヒドロアスコルビン酸と還元型DCPIPが生成されます。
Titration curve showing the photometric determination of ascorbic acid in blood orange juice.
図 2. ブラッドオレンジジュース中のアスコルビン酸の光度滴定による測定を示す滴定曲線。

果肉を含まない果汁の場合、サンプル前処理を行うことなく直接測定できます。果肉を含む果汁、固形食品、その他の果物および野菜由来製品では、まずアスコルビン酸を抽出する必要があります。

滴定前にアスコルビン酸が酸化されるのを防ぐため、試料にはしばしばメタリン酸が添加されます。滴定終点は、光度法またはバイボルタンメトリー法によって測定できます。

DCPIPによる光度滴定では、DCPIPがサーモンピンク色である一方、DCPIPH₂が無色であることを利用します。ヨウ素滴定では指示薬としてデンプンを用い、ヨウ素が過剰になると青黒色を呈します。Optrodeのような光学センサーを使用すると、いずれの滴定剤についても終点を確実に測定できます。

図2は、ブラッドオレンジジュース中のアスコルビン酸をDCPIPで滴定した際の滴定曲線の例を示しています。

バイボルタンメトリー滴定では、滴定容器内のt本の分極性電極間に電流を印加し、その結果生じる電位を測定します。サンプル中のアスコルビン酸が完全に酸化されると、電位が急激に低下し、これが滴定終点を示します。以下の表1に、さまざまなサンプルタイプに対応する利用可能なアプリケーション資料を示します。

表1. 各種滴定剤を用いた、異なる種類のサンプル中のアスコルビン酸の滴定分析に関する利用可能なアプリケーション資料。

サンプル企画滴定液アプリケーション試料
果汁およびビタミン製剤AOAC 967.21DCPIP

AN-T-086

AN-T-115

AB-098

果実・野菜由来製品ISO 6557-2DCPIP

AN-T-086

AN-T-115

AB-098

ビタミンおよびマルチビタミンカプセル、錠剤、経口液剤USP<580>DCPIP

AN-T-196

AB-098

果汁およびビタミン製剤Iodine (I2)AN-T-162
粉ミルクDCPIPAN-T-171
ワインPotassium iodate (KIO3)AB-225

ポーラログラフィーによるビタミンC測定

あるいは、ビタミンCはポーラログラフィーによって高感度に分析することもできます。ポーラログラフィーは、滴下水銀電極(DME)のような液体作用電極を使用するボルタンメトリーの一種です。分析中は、印加電圧を徐々に増加させながら、サンプル溶液中の2本の電極間を流れる電流を測定します。

ポーラログラフィー測定では、アスコルビン酸は酸化されてデヒドロアスコルビン酸になります。野菜ジュースや果汁は直接分析できますが、錠剤やビタミン製剤は、ポーラログラフィー測定に適したサンプル分取量を得るために希釈する必要があります。食品やその他の固体サンプルは、分析前にアスコルビン酸を抽出する必要があります。

アスコルビン酸含有量は標準添加法によって測定されます。この方法では、元のサンプルにアスコルビン酸標準溶液を添加します。図3は、オレンジジュース中のアスコルビン酸測定におけるポーラログラムおよび検量線を示しています。以下の表2に、異なるサンプルタイプに対応する利用可能なアプリケーション資料を示します。

Polarogram (L) and calibration curve (R) of a determination of ascorbic acid in orange juice.
表 3. オレンジジュース中のアスコルビン酸測定のポーラログラム(左)および検量線(右)。

表2. ポーラログラフィーによるアスコルビン酸分析に関する利用可能なアプリケーション資料。

サンプルアプリケーション資料
果汁および野菜ジュース

AN-V-073

AB-098

ビタミンカプセル、錠剤、経口液剤

AN-V-056

AB-098

食品、嗜好品、および飼料

AB-098

イオンクロマトグラフィーによるビタミンC測定

イオンクロマトグラフィー(IC)は、サンプル中のアスコルビン酸を測定するための有効な分析手法の一つであり、特に他の有機酸(例:リンゴ酸、酢酸、クエン酸)も同時に分析する必要がある場合に適しています。ICを使用する場合、サンプル中のビタミンCはアスコルビン酸イオンとして測定されます。アスコルビン酸イオンをクエン酸イオンや酢酸イオンなどの弱酸由来の他の陰イオンから分離するために、イオン排除クロマトグラフィー(IEC)が使用されます。

錠剤、ビタミンサプリメント、および食品添加物は、希釈後にICで直接分析できます。果肉を含む果汁については、サンプル中の粒子を除去するためにインライン透析を使用する必要があります。このインラインサンプル前処理技術は、分離カラムおよびICシステムを保護するために適用されます。

図4は、Metrosep Organic Acids – 250/7.8 カラム、逆サプレッション(LiCl)を用いた導電率検出、およびサンプル前処理としてMetrohm Inline Dialysisを使用した、果汁中のアスコルビン酸イオンおよびリンゴ酸の分析クロマトグラムを示しています。以下の表3に、異なるサンプルタイプに対応する利用可能なアプリケーション資料を示します。

Chromatogram for the analysis of ascorbate (266.7 mg/L) next to malate (1805.6 mg/L) in a grapefruit juice sample using ion exclusion chromatography (IEC).
図 4. イオン排除クロマトグラフィー(IEC)を用いて、グレープフルーツジュースサンプル中のアスコルビン酸イオン(266.7 mg/L)およびリンゴ酸イオン(1805.6 mg/L)を分析したクロマトグラム。

表3. イオンクロマトグラフィーによるアスコルビン酸分析に関する利用可能なアプリケーション資料。

サンプルアプリケーション資料
果汁および野菜ジュースAN-O-032
ビタミン錠剤AN-O-007
食品添加物AN-O-024

まとめ

ビタミンCの歴史は、大航海時代や探検の歴史、そして恐ろしい病気である壊血病と結び付いています。Lindによる柑橘類の有効性の発見は、有効な治療法の確立につながりました。1920年代から1930年代にかけてのSzent-Györgyiの研究により、アスコルビン酸がビタミンCであることが明らかにされました。今日では、ビタミンCは新鮮な果物や野菜から容易に摂取できるようになり、壊血病は主に過去の病気と考えられています。また、ビタミンCは健康維持を支える栄養素として利用されるほか、その抗酸化作用により食品保存料としても使用されています。

滴定法、ボルタンメトリー、およびイオンクロマトグラフィーは、さまざまな食品や医薬品中のビタミンC分析に有効な3つの手法です。果汁、食品、医薬品サンプルには、これらの手法で分析可能な他の多くの分析対象成分も含まれています。お客様の試験室のニーズに適した分析法を見つけるために、アプリケーションフォルダをご利用ください。

参考資料

[1] Hughes, R. E. James Lind and the Cure of Scurvy: An Experimental Approach. Med Hist 1975, 19 (4), 342–351.

[2Albert Szent-Gyorgyi. Profiles in Science. https://profiles.nlm.nih.gov/spotlight/wg (accessed 2023-02-09).

[3] Ascorbic Acid. Chemical Safety Facts. https://www.chemicalsafetyfacts.org/chemicals/ascorbic-acid/ (accessed 2023-03-01).

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作成者
Meier

Lucia Meier

Technical Editor
Metrohm International Headquarters, Herisau, Switzerland

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