【コラム】Metrohm IC(イオンクロマトグラフィー)の歴史―第3部
2020/09/14
記事
メトロームにおけるイオンクロマトグラフィー開発の歴史をたどる本シリーズの第3部では、2000年代半ばから数年前までの、比較的最近の時期に焦点を当てます。この時期、シーケンシャルサプレッションが導入され、クロマトグラムからベースラインの乱れを除去することで、分析はさらに高感度になりました。本ブログ記事の残りの部分では、第4世代・第5世代の装置を取り上げ、メトロームから世界に向けて提供された、プロフェッショナルで柔軟性が高く、インテリジェントなイオンクロマトグラフィーをご紹介します。
独自に論理的な判断を下すことができるほどスマートなICシステムがあるとしたら?例えば、対象分析種の濃度が高すぎて結果が校正範囲外になる場合、自動的にサンプルを希釈するといったことです。
Dr. Markus Läubli,
R&D Ion Chromatography at Metrohm AG
これはまさに、850 Professional ICとMagIC Net™ソフトウェアが実現できることです。実際、メトローム製Professional ICシステムは、ユーザーがほとんど手間をかけることなく、液体の取り扱いとサンプル前処理を行います!
Dr. Andrea Wille,
Manager Competence Center Ion Chromatography at Metrohm AG
2005年:シーケンシャルサプレッションの導入
2005年、化学的サプレッションのみの使用から生じる問題を克服するため、シーケンシャルサプレッションが導入されました。
化学的サプレッション((充填床型)Metrohm Suppressor Module、MSMを使用)では、二酸化炭素から解離した炭酸が、約15 µS/cmのバックグラウンド伝導度をもたらします。これにより、比較的大きなウォーターディップ、そして(炭酸塩由来の)システムピークが生じます。炭酸塩濃度によっては、このシステムピークがクロマトグラム中の他の対象ピークと干渉することがあります。
さらに、例えば塩化物がHClとして溶出する際など、H+の濃度上昇によりピーク内のpHが変化します。このpH変化は、炭酸水素塩―炭酸の平衡が炭酸生成の方向へ押しやられるため、ベースラインの低下を引き起こします。この効果を、図1に模式的に示します。
ここでは、算出されたベースラインは直線の赤線で示されていますが、実際のベースラインは分析種ピークの下でわずかに負の偏差を示しています。この負のピーク面積は、対応する分析種の定量には考慮されません。
これに加え他の影響も、検量線の直線性からのずれをもたらします。したがって、ほとんどの場合、二次曲線によるフィッティングを適用することが推奨されます。
さまざまなサプレッサー(MSMおよびMCS)の動作原理と可能な応用例について解説した、以下より無料のポスターをご覧ください。
陰イオン用シーケンシャルサプレッション
「シーケンシャルサプレッション」という用語は、化学的サプレッションとCO2サプレッションの組み合わせを表します。Metrohm CO2 Suppressor(MCS)は、化学的サプレッションの後、検出前に溶離液(移動相)からCO2を除去します。これにより、平衡は炭酸水素塩から溶存CO2の方向へシフトします。したがって、シーケンシャルサプレッションを適用することで、バックグラウンド伝導度は超純水そのものに相当する<1 µS/cmまで低減されます。
シーケンシャルサプレッションの効果として、ウォーターディップおよびシステムピーク(炭酸塩ピーク)は劇的に低減されます。前者により、フッ化物のような早期に溶出するピークの積分がより容易になります(図2)。後者は、対象ピークへの干渉や乱れを低減します。MCSをMSMと組み合わせて使用することで、クロマトグラム中に負のベースラインピークが存在しなくなり、直線性が向上します。それでもなお、1桁以上にわたる濃度範囲を校正する際には、二次曲線によるフィッティングを適用することが依然として推奨されます。
陰イオン・陽イオン両方にシーケンシャルサプレッションを用いた無料のアプリケーションノートの一覧は、以下でご覧いただけます。
4世代目:インテリジェントイオンクロマトグラフィー―2007年
Metrohmイオンクロマトグラフィーの第4世代は2007年に発表され、より高度な検出データ処理を実現し、ついにICへの装置知能の追加を果たしました。
2007年の850 Professional ICシリーズの発表後、2009年にはそれぞれのコンパクト版(881 Compact IC proおよび882 Compact IC plus)が発売され(図3)、あらゆる種類の実験室・サンプルスループットのニーズに対応するICシステムが提供されました。883 Basic IC plusも、同じく2009年にこれに続いて発売されました(図3)。
ハードウェアモジュールの全般的な改良に加え、電気伝導度検出器はアナログからデジタルへと切り替わりました。以前のバージョンは、独立した検出器ブロックと電子ユニットで構成されており、IC用電気伝導度の全信号範囲をカバーすることができました。しかしながら、最高の信号品質を得るためには、専用の測定範囲と最適なフルスケール(例:20 µS/V)を選択する必要がありました。
850 Professional IC装置用の新しいIC Conductivity Detectorは、「検出器ブロック」自体のみで構成されていました。完全な電子回路は、これで恒温検出器ブロック内に統合されました。デジタルデータ取得能力に加え、これは信号安定性を大幅に改善し、極めて低いノイズレベルをもたらします。このデジタル検出器は、範囲やフルスケールの設定を一切必要とせず、全電気伝導度範囲を扱うことができるようになりました。
ハードウェア制御とデータ処理の両方に対応する、新しい完全自社開発ソフトウェアであるMagIC Netは、Professional ICの世界に多くの強化された機能・能力をもたらしました(図4)。ここで、「インテリジェントIC」が誕生しました。
インテリジェントICとは、高圧ポンプや分離カラムといった、ほとんどのハードウェア構成要素の自動認識を意味します。この情報はすべての測定において記録され、ユーザーは各分析について完全なシステムトレーサビリティを得ることができます。
MagIC Netはまた、洗練されたInline Sample Preparationや自動校正技術を可能にする、多くの特殊な制御機能ももたらしました。論理的な判断が可能であり、これにより分析者は例えば論理的希釈を実施することができます。ここでは、論理的判断ソフトウェアが、ある分析が標準物質、QC標準物質、あるいはサンプルのいずれであるかを判断します。クロマトグラフィー分析実行後、結果は校正範囲外の濃度についてテストされます。このような外れ値が見つかった場合、MagIC Netは新しい希釈係数を算出し、新しい値でサンプルを自動的に再測定します。最終的に、手動での再希釈や再注入を行うことなく、すべての分析種について完璧な結果が得られます。
第5世代:モジュール式の柔軟性の到来―2013年
メトロームイオンクロマトグラフィーの第5世代は、Professional ICシステムのアップグレードとともに登場し、さらに多くの応用能力を可能にしました。940 Professional IC Varioと930 Compact IC Flexは、2013年に発表されました(図5)。
これらの装置に続いて、942 Extension Modules Vario、そして電気伝導度・アンペロメトリック検出オプションを備えた独立型945 Professional Detectorが矢継ぎ早に発売され、応用適合性をさらに広げました。
く2013年に発表された941 Eluent Production Moduleは、濃縮された移動相成分の希釈により、あらゆる種類の溶離液の連続調製を可能にしました。市販品、あるいは自家調製の濃縮液のいずれも使用することができます。したがって、溶離液の生成は、標準品や高価な溶離液に限定されません。
インテリジェントIC:実験室にとどまらない広がり
IC分析用の新しいMagIC Netソフトウェアの発表後、Metrohm Process AnalyticsによるMetrohm ICプロセスアナライザーの改良版も開発・発売されました。2016年には、測定チャンネル数と検出器数のみが異なるProcess IC ONEとProcess IC TWOが発表されました(図7)。これらのプロセスアナライザーは、940 Professional IC Varioシリーズを基に構築されており、実験室と同じ機能性を持ちながら、過酷な工業条件に適した頑丈な筐体に収められています。
Inline UltrafiltrationやInline Dilutionといった各種MISP技術(Metrohm Inline Sample Preparation)の使用に加え、さらなるサンプルコンディショニング用の9つの構成可能なウェット部モジュール、統合型溶離液生成、そして1つのシステムを最大20のプロセス地点に接続し、プラント内の複数の地点における時間節約型のシーケンシャル分析を可能にする機能により、応用能力はどのような実験室用装置よりもさらに拡大しました。液面センサーおよび漏れ・規格外データに対する統合型アラームの使用により、メンテナンス間隔が短縮され、アナライザーの稼働率が最大化されます。
工業プロセス分析・最適化におけるイオンクロマトグラフィーのアプリケーションにご興味がありますか?これらの製品を用いて、屋内および環境中の大気質もモニタリングできることをご存知ですか?以下より無料のIC用プロセスアプリケーションノートの一覧をご覧ください。